最新のBCP策定状況と課題 ~今求められる事業継続の取り組み~
2024/12/27.
BCP(事業継続計画)の策定は、企業が自然災害やサイバー攻撃など予測不能なリスクに備え、事業の継続や早期復旧を実現するために欠かせない取り組みです。
このコラムでは、株式会社帝国データバンクが2024年6月と8月に発表したBCPに関する調査の結果報告を基に、最新のBCP策定状況と、BCPを策定していない企業向けにBCPを策定する目的を解説します。
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BCP策定の現況
最新の策定率の分析
引用元:帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2024/06/25)
※引用データをもとに弊社にて加工・編集
2024年6月に発表された株式会社帝国データバンクの調査によると、「BCPの策定意向あり」とする企業は4年ぶりに5割を超えました。特に2024年の元旦に発生した能登半島地震がきっかけとなり、リスクへの備えに対する関心が高まりつつあるとみられます。
しかし、BCP策定率は全国平均で約20%(19.8%)とまだ低い水準にとどまっており、策定意向が高まる一方で取り組みまでには進んでいない状況が浮き彫りになりました。
企業が想定するリスク
企業活動において最も多く想定されるリスクは地震や台風、大雨などの「自然災害」です。頻発する自然災害は日本の企業活動に多大な影響を及ぼすため、多くの企業が重大なリスクとして認識しています。また、デジタル化が進む中で「情報セキュリティ上のリスク」への危機意識も高まっており、2024年6 月に大手出版社に対する大規模なサイバー攻撃が発生したこともあって、サイバー攻撃や情報漏えいなども企業の事業継続における重大な脅威と認識されるようになりました。さらに、「インフラの寸断」や「設備の故障」など、生活や経済活動の基盤に対するリスクも多くの企業が想定しています。
これらのリスクに対処するため、BCPを策定している企業またはBCPの策定に前向きな企業は従業員の安否確認やシステムのバックアップなど、人的資源や企業資産の保護を中心とした備えを行っています。
地域別の策定状況
BCP策定率は地域によって大きなばらつきがあります。内閣府が南海トラフ地震防災対策推進地域に指定している29都府県のうち、高知県は33.3%で全国トップ、続いて静岡県が26.8%、香川県が23.3%と高い策定率を示しており、これらの地域では南海トラフ地震への備えとして、企業のBCP策定意識が特に高いことが伺えます。
一方で、同じ南海トラフ地震防災対策推進地域に含まれ、2024年8月にマグニチュード7.1の地震が発生した宮崎県はBCP策定率が18.1%と全国平均を下回る結果でした。これは地域ごとのリスク認識や防災意識に差があり、さらには企業の規模やリソース状況などがBCP策定に影響を与えていることを示していると考えられます。
BCP策定の課題
この調査結果では、企業がBCPを策定していない理由として、「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」の不足を挙げています。また、「必要性を感じない」という企業も一定数存在し、リスクに対する危機意識の薄さがBCP策定の障壁となっていると考えられます。
BCPを策定する目的とは
多くの企業が「スキル・ノウハウ」「人手」「時間」の不足や「必要性を感じない」ことを理由に策定を見送っていますが、BCPを策定して緊急時に備えることで企業は持続可能な成長への道を切り開くことができます。
企業活動には自然災害やサイバー攻撃といった予測不能なリスクが常につきまといます。こうした緊急事態に備え、従業員や事業資産を守り、迅速な事業復旧を実現するための計画がBCPです。
BCPの策定は、以下の項目を目的として企業にとって将来的なリスクへの備えを確立する重要な取り組みです。緊急事態に直面したときの対応を事前に決めておくことで、企業が被る損失を大幅に抑え事業の早期復旧を実現できます。
- 従業員の安全確保と人的資源の保護
企業にとって最も重要なのは従業員の安全確保です。地震や台風、パンデミックなどの緊急事態が発生した際、従業員の生命と健康を守ることは企業の責務です。BCPを策定しておくことで、従業員の安否確認や避難ルートの確保、緊急連絡網の整備など、迅速に対応できる体制を構築できます。これにより、従業員が安心して働ける環境を整えるとともに、企業自身の信頼性を高めることができます。 - 事業の継続と早期復旧による損失の最小化
緊急事態が発生し事業活動が停止すれば、売上の減少や顧客からの信用喪失など、企業に多大な損失が生じます。BCPを策定しておくと、被害状況に応じた対応策をすばやく実行できるため、事業の停止期間を短縮し、経済的損失を最小限に抑えられます。さらに、事業復旧の手順や代替手段を事前に決めておくことで、緊急時でも混乱を避け、組織全体が効率的に動くことが可能になります。事前の準備が、事業継続におけるリスクを大幅に低減するのです。 - 取引先や顧客の信頼維持
企業の事業停止は、取引先や顧客にも大きな影響を及ぼします。BCPを策定し、緊急時に事業を継続できる体制を整えることで、取引先や顧客への迷惑を最小限に抑えられます。
特に、サプライチェーンに関わる企業では、BCPの存在が取引先との信頼関係を維持する鍵となります。実際に取引先からの要請でBCPを策定し、安否確認システムを活用している企業があります。
株式会社日本エー・エム・シー様 事例
BCPを策定していれば、緊急時の自社の被害状況や対応策などの情報を顧客や取引先に迅速に提供できるため、企業としての信頼性を高めるとともに、競合他社との差別化にもつながります。 - 社会的責任の遂行とブランド価値の保護
企業は社会の一員として、災害などの緊急時においても事業を継続し、社会に貢献することが求められます。BCPの策定は、緊急時における商品の安定供給やサービスの提供を通じて、企業が社会的責任を果たすための手段です。適切なBCPの策定と実行により、企業のブランド価値を守り、社会からの信頼を築くことができます。特に、顧客や地域社会に対する責任を果たす姿勢を示すことは、企業の長期的な成長と信頼性の確立に欠かせません。 - リスクへの備えと柔軟な対応力の強化
リスクは予測が難しく、いつどこで発生するか分かりません。自然災害だけでなく、サイバー攻撃、インフラの寸断、設備の故障など、企業を取り巻くリスクは多様化しています。BCPを策定することで、これらのリスクに対して事前に対応策を定め、緊急時に柔軟な対応ができる体制を整えることが可能です。企業の規模や業種を問わず、リスクへの備えを強化することで、想定外の事態が発生しても冷静かつ迅速に対応できる力が身につきます。
BCPが企業に必要な理由については以下の記事にさらに詳しい話を掲載していますので参考にしてください。
さいごに
BCPを策定することは、企業の生存戦略であり、従業員の安全確保や事業継続、顧客との信頼関係の維持、社会的責任の遂行など、さまざまな面で不可欠です。
BCPの策定は一見困難に思えるかもしれません。しかし、緊急事態に直面した際の損失を最小限に抑え、早期復旧を実現するための計画は、長期的な企業の成長と存続に繋がります。
BCPを策定することで、企業はリスクへの備えを強化し、社会からの信頼を築くことができるのです。
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